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ilovewell0323

アラスカの道《その1》

アラスカの道は、とにかく真っすぐが多い。アメリカ人は、「2点間の最短距離は直線である」の大ファンのようである。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州を走っている時は日本とそれほど違いを感じなかったが、ユーコン準州に入ったあたりで、真っすぐの道が増えてきた。「真っすぐ」は私も好きな口で、最初のうちはわざわざクルマを停めて撮影したりしていたが、半日もしないうちに止めた。真っすぐな道は、こちらでは当たり前ということに気づいたのだ。

真っすぐな道では信号など無きに等しく、ごくたまにカーブが出てくるとほっとする。同じ姿勢でハンドルを握り続けていると飽き飽きし、つまりは集中力を欠いてくるもので、ちょっとのカーブでも、それなりにステアリングの握りや姿勢に変化があるから、眠気覚まし、血行促進、気分転換などの点で助かる。ただし、土地の高低を無視して直線を貫くから、日本では考えられないような事態も考えられる。

ユーコン準州の州都・ホワイトホースから国境を越えて南アラスカのスキャグウェイを目指していた時だ。内陸からフィヨルドの入り江へ至る道は、最初は山がちのところを走っていたが、国境を越え海が近づくにつれ、緩やかな起伏のだだっ広い荒野を進むようになる。何回かアップダウンを繰り返すと、2台のキャンピングカーがのんびり走っているのが見えた。片側1車線の直線道路で、追い越し禁止ゾーンではない。2台まとめて抜いちまうか。アクセルを踏んでググッと加速したのが直線道路の上りが始まったあたり。荷物満載のジープ・チェロキーは案外と加速が悪い。1台目を抜こうとした時、先を走るもう1台のキャンピングカーとの距離が想定以上に開いているのが分かった。周りの景色が大きすぎて、距離感が狂っていたのだろう。抜こうか、やめようか。一瞬考え、そんな迷いの間にもクルマはアップダウンのピークに差し掛かろうとしていた。「抜こう」と決めてさらにアクセルを踏み込んだのと、「近づけば近づくほど、坂のピークの向こう側が見えない」と気づくのが同時だった。さらに加速してピークを越す瞬間、「死亡事故はこんな時に起こるんだ」の思いが頭をよぎった。

しばらく走って、車寄せで停車し、深くため息をついた。こんなドジをやっているようでは、先が思いやられる。そして何よりも、私を信じて送り出してくれたかみさんに申し訳なさすぎる。早速、「安全第一」と紙に書いて運転席からいつでも目に入るところに貼り付けた。




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