カナダ・ビクトリアで買った本で、南アラスカにスピリチャル・ベアという一風変わったクマのいることを知った。丁度、アラスカ行きの準備を進めている頃で、早速、旅程に「スピリチャル・ベアを探す」を組んだ。少し調べてみると、件のクマは、アメリカン・ブラックベアの白化型つまりアルビノのようだが、現地ではスピリチャル・ベア=霊的なクマとして、ひっそりと大切に見守られているらしい。
スピリチャル・ベアの存在はカナダではあまり知られていないらしく、大した情報は得られそうもない。そこで、スピリチャル・ベアの生息するグレートベア・レインフォレスト(メキシコ湾からの暖流の影響で高緯度のわりに温暖な気候。こちらでは珍しく多雨で針葉樹の森が発達している)の入り口であるベラベラ島に飛んだ。観光客などめったに訪れることはない小島で、ビジターセンターはだいぶ前に閉鎖。とりあえず、そこら中の人に「スピリチャル・ベアに会うにはどこへ行けばいいですか」と尋ねた。皆、怪訝そうな顔をして明確な答えはなかなか返ってこないが、波止場の爺さんが「○○島へ行けば見られる」と教えてくれた。それさえ分かればベラベラ島に用はない。メインランド(こちらでは大陸をこう呼ぶ)のプリンスルパートへ移動である。そこからの連絡船でスピリチャル・ベアのいる島へ渡れると聞いたのだが、プリンスルパート港の案内所で聞いてもちっとも要領を得ない。私の英語がイーカゲンなこともあるかもしれないが、ベラベラで聞いたのと根本的に話が違う。隣町(といっても100㎞離れているが)のテラスに行き、そこの観光案内所を訪ねてみる。スタッフ全員が私の質問に何とか答えようと頭をひねり、あちこち電話してくれる。ややあって、プリントルパートの○○ホテルに行けば、フロントでスピリチャル・ベア見学のツアーに申し込めるという具体的な情報を得た。スタッフもやれやれと胸をなでおろし、私はさっき来た道を100㎞戻る。○○ホテルに到着しフロントへ一直線。「スピリチャル・ベア見学の、、、」と息せき切って尋ねるも、係の女性は?の顔。この辺で、私の頭に「もう無理かも」のサインが点滅し始めた。ベラベラ島から10日くらい経っているが、その間、怪しいのから信憑性のありそうなのまでいくつかの情報を手に入れ、結局、答えはレインフォレストの霧の中である。
そういえばテラスの案内所で「クマならスチュワートに行けば、ブラックベアでもグリズリーでもすぐに見られる」なんて言っていた。後ろ髪惹かれつつ、私は白いクマからノーマルなクマにターゲットを変更した。
テラスからスチュワートへ向かう途中、何ということのない道路脇で、クロクマ(恐らく母クマ)と一緒に行動する茶色のクマを発見した。
留言