アラスカの地図を丁寧に見ていると、中心都市の一つであるフェアバンクスの郊外にチェナ・ホットスプリングスというのを発見した。ホットスプリングス=熱い泉、つまり温泉じゃないか。せっかく諫めていた風呂好き根性が再び頭をもたげ、一路、アラスカ温泉を目指した。
日本人は普段は肌の露出をはしたなく思うが、温泉などで大勢の赤の他人と一緒に真っ裸で風呂に入ることは何とも思わない。一方こちらの人は、普段の生活では肌を露出するのを気にせず、純情なおじさんは目のやり場に困ることがある。で、アラスカ温泉ではどんな入浴シーンが見られるのか。いやいや変な意味ではなく、こういうところにこそ ”文化の違い” が表れるもので、それを確認するのも旅の隠された目的であった。
温泉は、湯舟というよりプールあるいは池に近いような形状の露天で、混浴。といっても、予想通り彼らは水着で入浴していた。水着のまま首まで浸かってすまし顔である。泳ぐ人はいない。静かに行儀よく頭を並べているだけだ。プールサイドと言っていいのか分からないが、そこでは大胆なビキニの女性がサングラスをかけて、露出した肌を陽にさらしている。湯の中では恥ずかしがっているように感じられるが、恐らく、シャワーばかりで殆ど湯船につからない彼らにとって、入浴というのは少しだけ非日常の領域なのだろう。一方、プールサイドは日常に属するから普段通りの振る舞いになる、そんな風であった。温泉に浸かっているところを自撮りしようとしたら、後方のファミリーが背景に入るのを避けている気配があった。彼らなりのビミョーな境界線というものがあるのだろう。
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